2003.1.6-1.30
日本建築学会建築博物館開館記念 建築博物館所蔵資料展

伊東忠太展「拡張するアーカイブ」

伊東忠太というと、皆さんはどんなイメージの人物を想像されるでしょうか。日本そして東洋建築史の基礎を築いた学者、「法隆寺建築論」の執筆者、雲崗石窟の再発見者としての伊東でしょうか。あるいは彼の作品の細部を飾る奇怪な動物の彫刻、魑魅魍魎のスケッチ、緻密な時代分析で知られる摩訶不思議で愉快な人物、伊東の姿でしょうか。明治から大正、昭和にかけて発表された膨大な量の伊東の言説や作品は、彼の興味のひろがりとその驚くばかりのエネルギーを示すと同時に、彼の姿をひとつの枠にはめられない、とらえどころのないものにもしています。でもそれが今もなお我々を魅了してやまない彼の魅力なのでしょう。
その伊東忠太の思考の源泉をたどる貴重な野帳、日記、書簡、写真など、彼を研究するに欠かせない第一級資料がご遺族から建築学会に寄贈され、現在その整理が進行中です。建築博物館の発足にあたり、その成果を、本資料が持つアーカイブそのものの魅力、そこから導き出される無尽蔵の情報量から「拡張するアーカイブ」と名づけ、展示することとなりました。伊東のアーカイブからいったいどのように多様な世界が現れてくるのでしょうか。
「造化の秘訣を発(あば)く」とは、伊東忠太が明治25年に帝国大学に提出した卒業論文『建築哲学』にある伊東自身の言葉です。『建築哲学』の「第一編第一章 学ト述トノ関係ヲ論ズ」に、「其精華を探り其極致に到り以て造化の否決を発く、亦期すべきなり」とあります。造化と同じ音を持つ造家は、明治時代に建築を指した言葉です。造家を建築に、造家学科を建築学科に、そして造家学会を建築学会に変える道を開いたのが伊東忠太でした。
建築博物館所蔵の資料群によって、彼の多様な人物像の一端が皆さんに伝わるよう期待して、本展覧会を開催いたします。建築や美術関係の方ばかりでなく、当時のアジアや日本の歴史、風俗に興味のある方にも楽しんでいただける内容と思います。

◆展覧会
会期:2003.1.6-1.30
場所:日本建築学会建築博物館ギャラリー
◆建築博物館開館記念講演会+パネルディスカッション
「過去がひらく未来 −建築博物館の重要性と可能性−」
日時:2003.1.15 14:00-16:30
会場:建築会館ホール
講演:ジャン=ルイ・コーエン
PD:磯崎新 鈴木博之 ジャン=ルイ・コーエン
司会:藤岡洋保

主催:日本建築学会
後援:日本経済新聞社

会場風景
会場風景
会場風景
フライヤー/表
フライヤー/裏